2006年12月 3日 (日)

牧美也子「マキの口笛」復刊など

このブログはココログフリーを使っているのですが、コメントやトラックバックがあってもスパムに埋もれてしまうので、もっと上のバージョンに変えようと思ったところ、フリーからベーシック、プラスには移れないのだそうです。私はniftyの会員なのでAmazonアフィリエートの使えるプラスに移転しようと思っていますが、思うように作業が進みませんでした。
それでとりあえず最近の話題をここで書いておきましょう。

「ラブ★コン」連載終了

いま発売中の別マを買い損ねていたのですが、人気ヒット作の「ラブ★コン」が最終回でした。別マでは他にも連載終了作品がいくつかあって、今後どうなるか気になりますが、ここ2,3年はほとんど積ん読に近かったので、ネット上の情報で動向を把握するという妙な状況になっていますけど、別マのカラーそのものは他の人気連載も続いているので大きく変わることはないでしょう。「ラブ★コン」について何かを論ずるというのは野暮というかその魅力はみんなよく知っているのだからその必要を感じないですけれども、ただ、多田かおるがリードしてきた学園コメディをきちんと引き継いだ由緒正しい別マの看板作品であったでしょう。

Young Youや旧りぼん系のカラーが入ってきているコーラスのほうに何か影響が出るかと考えても、別マから誰か作家が移ってくるかとかとりあえず思いつきません。YOUのほうは着実に充実していますね(でもこれ以上雑誌を家に増やさないため定期購入して読んではいないのですが...)。

牧美也子「マキの口笛」復刊

水野英子、わたなべまさこと並んで、いえそれ以上に昭和30年代にトップレベルの広い人気を誇り、読者に強く支持されて男性作家優位だった少女雑誌に女性まんが家の地位を確立させた作家というべき牧美也子さんの初期の代表作が雑誌おこしを用いてついに復刊されました。
牧さんというとやはり草分けとしてジャンルを確立させたレディースコミックの作品は入手しやすいですが、それ以前の作品は読む機会を逸してきました。

牧さんの描く少女の絵がリカちゃん人形の顔のデザインに採り入れられたのは有名な話で、そのような作家の少女まんが作品がなかなか読めないのは、原稿が散逸しているのも大きな理由でしょうが、この時期の少女まんががきちんと評価されてこなかったこともあるでしょう。10代でデビューする作家が多かった頃に、一度銀行勤務を経て書籍問屋であったという家業の事情から退職してから20代になって少女まんが家に転身したと言う経歴からも、もう少し年長向けの「少女」や「少女クラブ」に描いた作品にはもっと大人っぽい部分が出ている可能性があるのではないかと思っています(以前ほんの一部の短編を読んだことがありまして、
もっと瞳に意思がこもっていたものを見ています。レディースコミックをいち早く手がけたこともありますし)。

「マキの口笛」はりぼんの連載ですが、何はともあれ少女まんが史的にはずせない作品が当時の状況の解説も含めて出されたことは大変意義深いものでしょう。
たとえば巻末の対談によれば「マキの口笛」の連載された当時は女の子が口笛を吹くのはいましめられていた時代であったそうです。
いまの女の子では想像がつかないかもしれませんが、牧さんと親子ほど年の違う私があくまでも想像してみれば、口笛を吹くことははしたなく、そして不良っぽいとみなされていたのかなくらいの感じがします。しかしながら、実際どのような感じでそれが許されなかったのかとなるとその時代を少女として過ごした女性でないとわからないでしょう。

 

マキの口笛 Book マキの口笛

著者:牧 美也子
販売元:小学館クリエイティブ
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これは前後編に分けられるほど分厚いのですが、貸本でこのような分厚いものは少なくとも私は見たことがなく、昔原稿が散逸していて他の人がトレースし直した虫プロのコミックスでは全3巻になりますが、たぶん分冊にしてしまうといまの人は最後まで読まないからと判断されたのかもしれません。700ページで3800円しますけど必読の一冊であるでしょうから(まだ読み始めていませんが)、今回の出版を行った小学館クリエイティブの英断に感謝したいと思います。

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2006年11月 4日 (土)

手塚治虫とニッポンのマンガ

最近は情報収集する時間がなかなかないのですが、手塚治虫が亡くなる前の最後の講演が明日放映されるというのでちょっと書いておきます。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/061105.html

2006年11月5日(日) 午後9時〜9時59分
NHKスペシャル「ラストメッセージ」シリーズ第一回目とのこと。以降、物理学者の湯川秀樹、映画監督の木下恵介と続きます。

講演自体を見たわけではありませんが、亡くなる前に何かの賞に出席した写真ではびっくりするほど痩せていて、ショックを受けた覚えがあります。
亡くなる直前まで病室でもマンガを描いていたというようなことも何かに書いてあったと思うのですが、マンガの神様というよりもマンガの神様に選ばれてしまった人、という感じです。

 

ニッポンのマンガ―AERA COMIC Book ニッポンのマンガ―AERA COMIC

販売元:朝日新聞社
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また戦後デビュー直後にアメリカのプランゲ文庫に保管された作品も収められ、どんなマンガでも描けた手塚の才能がうかがえるものです。
手塚治虫文化賞10周年記念で出された本。大賞受賞作家の5人が書き下ろしで1000円ちょっとというのはかなり安い値段でしょう。

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2006年9月21日 (木)

『少女の友』の話など

最近なかなか更新する暇がありませんが、最近気づいたことなど。

戦前にリボンの騎士を先取りしていた松本かつぢの『?(なぞ)のクローバー』が今年弥生美術館で公開された件について、以前に出た本に記載がありました。題名までは書いてありませんでしたが、上田トシコ先生がその作品が書かれていた頃にすでにお弟子さんですからその存在は知っていたようです。

 

『少女の友』とその時代―編集者の勇気 内山基 Book 『少女の友』とその時代―編集者の勇気 内山基

著者:遠藤 寛子
販売元:本の泉社
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2004年に出た本で私も読みましたが、うっかり読み飛ばしていたようで、今引用する時間がないので、あとで引用部分を追加修正します。

話が変わりますが、谷川史子さんが青年誌に描いていました。デビュー当時から男性ファンが付いて話題になっていましたが、最近の男は「クッキー」とか読まないでしょう。
YOUNG KING OURS(アワーズ)の増刊OURSplusで連載になっているようです。
そういえばデビューして何年になるんだろう、とかふと思いましたが小花美穂さんよりもっと前なのでゆうに10年以上経っていますね。

いかに熱心なファンがいるのかはウィキペディアを見るとわかります。そういえばタニカワと読むんですな。私も普通にファンなんですけど。あと須藤真澄さんとかも熱狂的なファンがいますね。おとめちっく以降では柊あおいさんが一世を風靡したのは80年代ですか。

このへんの話もおいおいしていきたい気もしますがあまり思い出話的にならないので、研究みたいな形になってしまうとブログではあまり書かないかもしれません。

新刊が出ていたので載せておきましょう。

 

花と惑星 Book 花と惑星

著者:谷川 史子
販売元:集英社
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谷川さんで私が思い出すのはたぶんデビューは同時期だと思うのですが、僕は名取ちずるさんが好きでした。ちょうど20年前にデビューしたんですね。デラマの1月号だったと思います。残念なことに2年前でしたか亡くなられてしまいました。遺作はまだ手に入ります。

 

ぐるぐる迷路23 マーガレットコミックス Book ぐるぐる迷路23 マーガレットコミックス

著者:名取 ちずる
販売元:集英社
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名取さんのような作家ってよくいるようで意外といないんですよ。こういうタイプがなかなか売れなくなったということもあるんでしょうけど。新作ごとにある種の孤独を抱えた独特の深みが増していったので遺作になったのはほんとうに残念でした。

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2006年9月11日 (月)

最近出た本より

最近新しい作家に疎くなってきてしまいました。古い作家でも需要はあると思うので開き直って紹介します。

 

ハチミツとクローバー 10 (10) Book ハチミツとクローバー 10 (10)

著者:羽海野 チカ
販売元:集英社
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ハチクロの最終巻が出ました。掲載誌が途中でヤングユーからコーラスに移りましたがその時点で終わりに向かっていたようです。9巻で突然の展開だったので読み損ねている場合は現在品薄の9巻も一緒に買っておいたほうがよいかも。

 

ホットロード 1 完全版 (1) Book ホットロード 1 完全版 (1)

著者:紡木 たく
販売元:集英社
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ホットロード 2 完全版 (2) Book ホットロード 2 完全版 (2)

著者:紡木 たく
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

紡木たくがこの作品を書くためにマンガ家になったといっても過言ではない大ヒットした一作ですが、90年代半ばには反動で忘れられた作家に近くなっていたような気がします。今だと受け入れられる素地がまた整っているような気もしますがどうでしょうか。ちなみに集英社の携帯コミックでも読めるようになっているようですが、あくまでも抜粋なのかそれとも全部読めるのかは確認していません。NANAの矢沢あいはデビュー当時は紡木たくのフォロワーの一人という感じの位置づけでした。

 

みどりの花 Book みどりの花

著者:あすな ひろし
販売元:ブッキング
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ブックデザインがとても凝っているのですが、注目して欲しいのが一番上の題名のところ。馬車が真っ黒で刷られているのに対して題名のほうはおそらく下の深緑を使っているのでしょうが、よーく眼を近づけるとさらに細かい網かけが入っています。ペンで網トーンみたいな効果を出した題字を原寸よりかなり縮小されているにもかかわらずそれとわかる印刷で驚くほど気合いが入っている装丁です。
実は有名な「嵐が丘」もオンデマンドで出版されているのですがそちらのほうは雑誌おこしで一般書店には出回っていないもの。どちらもマストアイテムです。

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2006年8月24日 (木)

SWITCHのaiko特集はマンガ特集としても良いです(付:海外少女マンガ事情紹介)

昨日、雑誌SWITCHの新しい号が発売されました。新しいアルバムを同じ日にリリースしたaikoの特集にマンガの特集を絡めてまして、100冊セレクションが私の好みとけっこう合っているのがうれしい。もうひとつAGELESS COMICS 2006という特集と合わせたところもあるのでしょうが、ちょっと古いマンガでも載っていますし私が時々やるように押しつけがましい紹介はしないし、しかも私も尊敬する山下和美さんとの対談つきですよ!

(押しつけがましく付け加えると、くらもちふさこの「おばけたんご」とか冬野さほの「ポケットの中の君」とかもう十年以上前ですが今読んでも圧倒的にすばらしいし、もうぜんぜん年齢を選びません。冬野さほはデビューから読んでいましたので岡崎京子、松本大洋絡みで知ったわけではないんですが、というか親友だった安野モヨコさんと同じくらいにデビューしてそのへん全部読んでたので当時自分はこんな細かいところまで少女まんがに詳しいんだろと思っていましたけど、岡崎さんが絶賛したこともあってか冬野さんが現在ほとんど描いていないことを考えると今でも新刊で手に入るのは良いことです)

ポケットの中の君 Book ポケットの中の君

著者:冬野 さほ
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


aiko, Cocco, UAの存在は私が日本のポップを聴く上で今でも別格なんですが、雑誌bridgeがCoccoのインタビューを掲載していて、悔しいけど渋谷陽一はインタビューがうまいよ、とか思いましたが(しまいのほうは渋谷節が出過ぎてイマイチでしたが、渋谷さんのFM番組で育ったので昔は洋楽の紹介者として信奉してました。ピーター・バラカンさんなんかが出てきてもっと紹介する音楽のレンジが広かったので乗り換えちゃいましたが)、aikoさんの特集もSWITCHという雑誌自体がCoccoやUAの特集号を出しているような傾向なので、興味深く読ませていただきました。

aikoさんの歌詞の世界は失恋の歌がやたら多かったり、微妙にセカイ系的なものに通じる面もあって(世界が終わってしまったらとかなくなってしまっても とか、たびたび歌詞に出てくるんですね)、でもやはり女性視線だから似て非なるものではあるのですが、今回のSWITCHはナイス特集でした。それにして も最近の女性はみんな30代になるくらいで若さとは違ういい顔になるんだよな。

なんといっても音楽がめちゃめちゃ好きだというのが曲を聴いてるとビリビリするほど伝わるのがすごくいいんですね。そのへんは本当に信頼しているので、マンガのセレクションも、表現や歌詞のイメージともよく対応がとれていて、しかも私が尊敬するほど好きでもほとんどまともに紹介された試しのない作家の作品とかが選ばれていたりするし!驚いたのは椹木野衣さんが岡崎京子の後継者と絶賛しながらまるで話題にならなかった(いやこれは売れないでしょう確かに)「BABYいびつ」とかちゃんとaikoさんがコメントまでつけているし!

SWITCHの新しい号は今見たらAmazonではどうやら売り切れてしまっているのでアフィリエイトが載せられませんが、SWITCHのサイトでの最新号紹介と、aikoさんの新譜は大きめにして、あとマンガと関係ないですがbridgeのほうを載せときます。

彼女 Music 彼女

アーティスト:aiko
販売元:ポニーキャニオン
発売日:2006/08/23
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Cut 増刊 bridge (ブリッジ) 2006年 08月号 [雑誌] Book Cut 増刊 bridge (ブリッジ) 2006年 08月号 [雑誌]

販売元:ロッキング・オン
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STUDIO VOICEも最新号がマンガ特集なので一応。比較してみるのも一興ですか。ヤマダトモコさんが出ていますが、ぜひもっと活躍していただきたいものです。

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2006年 09月号 [雑誌] Book STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2006年 09月号 [雑誌]

販売元:INFASパブリケーションズ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

最後に、集英社のサイトで、藤本由香里さんによるアメリカ少女マンガ報告(リンク先参照)という特集が組まれています。集英社メインページからたどれないって、いったいどうなっているのと思いましたが、ここからリンクしておきますので海外マンガ事情を知りたい人はぜひごらんください。

なお記事はPDF形式なのでWindowsだとAcrobat Readerをネット経由でインストールする必要がありますがページを参照のこと。

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紀伊国屋画廊であすなひろしと高橋真琴の展示

おとといはPR誌の「ちくま」を探しに職場から遠く離れた新宿まで行ってしまいましたが、ジュンク堂新宿店には置いてなかったものの毎日新聞がフリーペーパーで出している「まんたんブロード」が3ヶ月分手に入って、「ちくま」は紀伊国屋書店には残っていました。昔は連載を読むのに手に入れ損ねたら、売っている店を覚えているのでそこに行って買ったりもしたんですけど、その店も改装されてから置かなくなったようで(単に売り切れていたのか?)、やっぱり発行日をチェックしないといけません。

大島弓子さんの連載まんが グーグーだって猫である〈2〉 が載っている角川の「本の旅人」を1年くらい前から途絶えさせてしまいまして、きっと単行本がでるよな、と開き直ってしまいましたが。しかしまんたんブロードのほうは萌え全開なんやねえ。

ところで学生が夏休みのせいか紀伊国屋書店でマンガ関連のフェアをけっこうやっておりますね。
8月26日から新宿本店の紀伊国屋画廊で、原画'(ダッシュ)展が開催されまして、なんの因果か高橋真琴あすなひろしの組み合わせです。

原画そのものがものすごく手が込んでいるといえば、この二人は間違いなく双璧ですから。念のため井上雄彦とか松本大洋とか突っ込みを入れないでくださいね。

あすなひろしはホワイトを使わずに白は塗らずに残すんですから。

トーンを使わずにペンのカケアミでとんでもなく繊細なグラデーションを描くのですから。

二人一緒に見られてこれはお得ですってば。

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2006年8月19日 (土)

文化庁メディア芸術祭10周年企画の「日本のメディア芸術100選」アンケートからマンガ10作を選ぶ

文化庁メディア芸術祭が10周年を記念して、日本を代表するメディア芸術100作品を選ぶためのWebアンケートをやっています。こちら→「日本のメディア芸術100選」

マンガ部門アンケート(→リンク)は、マンガの中から「日本を代表するメディア芸術作品である」と思うものを10点まで挙げてください(必須項目)。となっており、サンプルのリストがありますが、このリストに入っていない作品でも3作品までは選べるスタイルになっています。逆に言えば7作品はリストから選ばざるを得ないわけですが、私は10作品に絞ることのほうがはるかに大変でした。リストに入っていない3作品を選んだあとで、リストの10作品と合わせて13作品であることに気づいて、苦肉の策で手塚治虫と白土三平を外すという暴挙、最後まで悩んだ揚げ句松本大洋も外しました。90年代以降で選んでいた作品が全部選外の憂き目に遭って、この選択でいいのだろうかと悩んだのですが、古い作品のほうが外しにくいんです。つげと萩尾望都を外すのは作品数が充実していてリストに入っていない傑作が選びたくて結局できませんでした。

私の選んだ10作はこの続きで。

続きを読む "文化庁メディア芸術祭10周年企画の「日本のメディア芸術100選」アンケートからマンガ10作を選ぶ"

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2006年8月14日 (月)

少女まんが雑誌が動いています

トラックバックスパムが止まってくれないので試みに受け付けないようにしています(と思ったら初期設定の変更ではすでに書いた記事には反映されないのですか)。
これまでのエントリですが、今年に入ってから、女の子向け漫画に関して戦前から昭和30年代の前半にかけて思いがけない発見が続いて、それはイレギュラーな面もあるでしょうが私の予想していたものをまったく超えるものといえました。

松本かつぢの戦前の初期作品が手塚治虫に決して劣らないダイナミックな構図を全面的に採り入れていたり、高橋真琴の復刻された「さくら並木」が卓球を題材にスポーツ漫画としても十分なレベルにあったことなどは私自身全く予想もしていなかった出来事で、スポーツ漫画といえば手塚治虫が強くライバル意識を燃やした福井英一氏の「イガグリくん」があるので、「さくら並木」が描かれた頃の少年マンガにおけるスポーツものがどのようなものかが今の私にはよくわかりませんが、忘れられているマンガ史を見直してみる余地がまだまだあると感じられました。

その一方で、私は雑誌のマンガ読みで単行本はよほど気に入らないと買わないですませていたのが、ここ数年読む余裕を失っていきました。読みたかった長編をまとめ買いするほうにシフトし(ほとんど少女まんがではない)、明らかにここ数年の新しい波がメインストリームになり、90年代のテクノムーブメントに乗り切れなかった時と同じような感覚があります(つまり<ポストロック>を聴くようになった)。
最近は雑誌を購入はしてもほとんど読まないも同然でストーリーをたどっていなかったりしていたのですが、ただNANAの映画が大ヒットしたあたりからでしょうか、少女まんが雑誌の動向に何やら動きがあるような感触があって最近気になってきました。「ハチミツとクローバー」と「ラブ★コン」を同時期に実写映画化し、「ハチクロ」は大々的なキャンペーンだったのでコーラスで久々にきちんと読んだら連載終了するし、フラワーズが創刊された時は廃刊になるんじゃないかと噂されていた別コミも見事に世代替わりを成功させて、今展開しているアニメとのメディアミックスもきちんと計算された形で進みそうだし、10代から40代までの読者の広がりを持つような作品に大きな変化が見られます。というわけで久々に今後の動向に興味が湧いてきました。なかなか読む時間が無いんですが久々にバックナンバーの積ん読をまとめ読みしてみたほうがいいのかも(どうでもいい話ですが私個人的には偉大なる花本姉妹のお風呂シーンもそろそろ見納めでしょうか)

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2006年7月29日 (土)

少女マンガの名編集者が語ったその世界

7月23日のエントリで触れた森下文化センターの連続講義の先週の内容について、夏目房之介さんのブログでレポートがありました。とても貴重だと思います。丸山昭さんとのコンビで少女クラブの一時代を築いた新井善久さんにも触れられていて、新井さんにもお話を聞く機会があるといいんですが難しいでしょうか。二上洋一氏ご自身が集英社の名編集者であることも納得できました。

http://www.ringolab.com/note/natsume2/archives/004664.html

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2006年7月26日 (水)

今日の読売夕刊に高橋真琴の記事が載りました

今日発売の読売新聞夕刊、本・よみうり堂のコミック館のコーナーで、藤本由香里さんが先ほど復刊のあった伝説的少女まんが家である高橋真琴の作品を雑誌中心に調査した成果を書いて記事になりました。昭和33年(1958)に光文社の雑誌「少女」での初の連載「あらしをこえて」で、まんがにスタイル画が導入され、その後の少女まんがの独特と言われるスタイルに決定的な影響を与えた、というものです。

高橋真琴が少女まんがに大きな影響を与えたという話自体は昔から伝えられていたのですが、長い間実際にマンガ作品が読めないこともあり、はたしてその伝説の実際はどうなのか、という点について当時の少女雑誌を集中的に読み込むことで、明らかな変化があったということをつきとめたことになります。

自分も少女まんが雑誌を読み始めて以来、ときどきここでは実験が行われているんじゃないだろうか、と思うことがときどきありましたが、高橋真琴の実験がピークに達するのが「あらしをこえて」の前の号になる昭和32年12月号の「のろわれたコッペリア」であり、戦後少女雑誌の絵物語的レイアウトをまんがと融合させる試みが当時の他の作品と比較しても、あるいはその後の少女まんがと比較してもなお特異な印象を与えるものらしいのです。

当時のマンガ界は光文社の少年少女雑誌の天下で(その名もずばり「少年」と「少女」)、後に女性週刊誌の「週刊女性自身」を創刊する天才編集者と呼ばれた黒崎勇氏が「少女」の編集長でした。

ちなみに日本で最初の女性週刊誌は「週刊女性」で、今検索をかけたら電通の作った年表のページによれば驚くことに昭和32年に河出書房から創刊されていました。河出書房が倒産して主婦と生活社から復刊されて現在に至っているようですが、この時期に雑誌界に大きな変化が生じたことがうかがえます。

「女性自身」が創刊されたのが昭和33年12月ですが、「少女」という雑誌は当時非常に斬新なつくりであったことも藤本由香里さんやヤマダトモコさんが調査で実物を見て驚いたとの話を伝え聞いています。表紙を円形にくりぬいて中から次の見開きの一部が見えるとか、高橋真琴の作品で原稿の横幅をちょっと広くして、読むときに折り込みを開くと折り込みに隠れていた画面が現れる仕掛けのまんががあったらしいんですが、とにかくそういった工夫がゴージャスだったようなのです。

 

MACOTOのおひめさま Book MACOTOのおひめさま

著者:高橋 真琴
販売元:PARCO出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

まんが家からデラックスマーガレットなどの表紙絵描きを経て今はこんな絵になっています。今でもこれ一筋という感じで、原画の瞳の星の配置が本当に星座のようになっています。瞳の星の変遷をたどる調査から高橋真琴が圧倒していたという感じで調査が進んだのでしょう。

ちなみに内藤ルネが付録などにイラストを描き始めるのも昭和33年頃から本格化しており、弥生美術館の学芸員である中村圭子さんが内藤ルネの本に労作である出版関連リストを作成し掲載していますが、それによると「少女クラブ」がお正月増刊で絵はがきに起用し、その後すぐ「少女」が付録を依頼しています。5月には少女ブックとりぼんがルネに依頼を開始し、高橋真琴と内藤ルネのブレイクがほぼ同時期であることがわかります。高橋真琴は書き込みに凝って遅筆のため「少女」の独占に近い状況でしたがほかの雑誌にも書いています。ちなみに日本で初めてのマンガ家と編集部との正式な専属契約は少女クラブとちばてつやとの間に交わされたもので、少女クラブの名編集者である丸山昭氏がはっきりと明言しておりますが、年を忘れてしまいました。「ママのバイオリン」の連載も昭和33年から始まっています。ちばてつやは人気作家として後に少年ものと掛け持ちしやがて少女まんがから離れますが今読んでも十分面白いもので、高橋真琴氏の今回復刻された作品も思ったよりしっかりしていて、その世界は大人っぽくさえあり、優れた資質を持っていたことがわかる面白いものでした。

 

内藤ルネ―少女たちのカリスマ・アーティスト Book 内藤ルネ―少女たちのカリスマ・アーティスト

著者:内藤 ルネ
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

出版関連リストが載っている本はこちら。

ちなみに中原淳一とともに戦前一世を風靡した松本かつぢは昭和29年頃引退を宣言したそうで、戦前の大スターである蕗谷虹児が抒情画の依頼を失うのが昭和30年、大城のぼるが戦後少女向けに作品を書きながら筆を折るのが昭和31年頃と考えられますので、手塚治虫のインパクトが少女雑誌に及んだのがもしかすると関係あるのかもしれませんが、手塚の持っていない部分を追究したのが高橋真琴だったと言えるでしょう。大阪から東京に呼ぶために飛行機を使わせた作家は手塚と真琴だけだったと伝説になっています。

 

完全復刻版 パリ‐東京・さくら並木 Book 完全復刻版 パリ‐東京・さくら並木

著者:高橋 真琴
販売元:小学館クリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

二冊箱入りセットのため表紙が違いますので注意。 これは戦前の大物作家が筆を折っていく時期にあたる、雑誌に進出する前の貸本時代の作品で、初期作品は意外な側面を見せて、「さくら並木」は卓球マンガ(バレエまんが絵物語つき)としても面白いです。こんな作品があるとは!

戦後に独立して出版社を興し独自路線で少女文化に抜群の影響力を誇った(内藤ルネの師匠でもある)中原淳一を好んだという高橋真琴の画風には、蕗谷虹児の点描、玉猫のような独特の手法がはっきりと受け継がれでいます。松本かつぢからの流れとはやはりちょっと違うようです。

ちょっと遅くなりましたが週末に図書館でも記事が見られるのではないでしょうか。このへんの話はいろいろと書きたいのですが今回きちんとチェックしてないので誤りがあるかもしれません。今後手直しがあるかもしれませんのでお断りしておきます。

言うまでもないかと思いましたが、高橋真琴は今でも現役の絵描きとして活躍しています。

高橋真琴画集 愛のおくりもの Book 高橋真琴画集 愛のおくりもの

販売元:美術出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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